2013年3月のアーカイブ

近未来空想科学短編小説「猫の手よりも猫の耳」

「田中の給食費を黙って机から取っちゃった者は正直に申し出なさい」

「先生はお前たちを信じている」

「正直に申し出たら、先生、怒らないから」

誰も手をあげようとしない。

「仕方がないな。じゃあ、全員、目をつぶって。目をつぶったら、全員、「猫耳」をかぶりなさい」

やれやれ。
また、「猫耳」の出番か。
人間の脳波を感知し、耳が動くというしくみの玩具だ。

http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/085/85718/

 

この一見アホらしいおもちゃ。
21世紀初頭に発明されて以来、学校のホームルームなどで、やむなく、

「犯人探し」

をしなければいけなくなった局面で重用されている。
現在、学校教育に導入されているのは、装着者が、うそをついたり、やましい心を持ったりしている場合にのみ、耳がピコピコと動くというカスタマイズ・モデルである。

「よおし、目を開けろ。もういいぞ」

僕を含むクラスメート全員、不機嫌そうに目を開ける。
またしても、犯人は即座にわかったらしい。

「猫耳」が導入されるまでの時代、犯人が名乗りをあげない限り、ホームルームが延々と何時間も続いていたというから、驚きでである。
かといって、さすがに嘘発見機の導入は、教育の現場という体面上、ためらわれたという。
「猫耳」なら、情報技術の勉強道具という建前論が使えるし、かわいらしいおもちゃということもあり、導入に際しての心理的な抵抗感も小さくて済んだ。
「猫の手を借りたい」ほど忙しかったこの時代の教育現場を、何と「猫の耳」が救ったわけである。

ああ。
一度でいいから、

「先生はお前たちを信じている」

が口癖の担任教師にも「猫耳」をかぶせてみたいものだ。
彼のかぶった猫耳がピコピコと動く様を見ることができたら、学校生活最大の思い出になること、間違いないのだ。

2013年3月19日

セルフ・ブランド・マネジメントをテーマとした企業研修

このところ、セルフ・ブランド・マネジメントについて考える日々が続いている。

第一に、「自分のセルフ・ブランド・マネジメント」を考えるようになった
セルフ・ブランド・マネジメントにはゴールがあるわけではないから、ビジネス上現役でいる限り、ずっと努力を続けて行かなければならない。
当然ながら、私も例外ではない。
もうちょっと自分のブランディングについて考えよう。企業としての㈱経営教育総合研究所とその構成員としての私が、竹永亮というコンサルタントをどう売っていくか、また、深堀してみようと思う。
思えば、最近は友人やクライアントの相談に熱中する余り、自分自身との対話を軽んじていたようにも思う。

第二に、企業におけるセルフ・ブランド・マネジメント」のありかたを考えるようになった
私のウォールやブログをご覧になっての影響だと思うが、

① 無敵のプレゼンテーション
② あなたにそっと教えるセルフ・ブランド・マネジメント
③ 不敗のエレベーター・トーク

関連の仕事が一気に増えてきた。
新入社員研修を担当させていただいている企業いずれからも、これについてのオーダーを頂いたほどだし、若手の営業担当者の能力開発メニューにも入れてほしいというオーダーを頂いている。

加えて、

④ セルフ動画プロモーションの技術

に対するニーズも強く感じる。
まさか、上場企業や金融機関から「動画による情報配信の方法」について研修依頼を受けたり、コンサルティング依頼を受けるようになるとは、つい2年ほど前には思ってもいなかった。
これは、私が…というよりも、AppleがiPhoneやiOS用に開発した神アプリ「iMovie」による需要創造と見るべきだろう。
とてつもない可能性をもったアプリである。

以前から、経営コンサルタントの千種伸彰氏が提唱していた

「 企業放送局」
「1企業1放送局の時代」

という発想をもった企業も登場している。驚くほどの普及速度である。

私たちはよく結婚式の披露宴で、招待客である自分たち自身が出演する動画作品をフィナーレで見せつけられることが多くなった。
カメラマンが披露宴会場をまわり、撮影・収録し、それを一気に編集し、作品に仕上げる。それを流す…という流れなのだろう。

はじめて見た時には

「どうなっているんだ?」

と思ったものだが、今なら、ほぼ同じことがiMovieでも可能である。

私は再三に渡って、自分が担当する講演・セミナーや企業研修において、iMovieを使ったプロモーション動画の撮影・編集・上映を行ったが、十分に可能である。
参加した受講者の方々はあっけにとられる。

「この先生、いつのまに編集したのだろうか」

グループ・ディスカッションが10分もあれば十分。20分あれば、そのすきにかなりのデコレーション(例:音楽、テロップ等)を入れることも可能だ。
私の個人的な能力によるものではない。誰でも可能なのだ。

iMovieを使えば、自社の製品・サービスのプロモーションはもとより、組織の構成員(経営者・従業員等)を売り込んでいくセルフ・ブランド・マネジメントにおいても、自在に活用することができる。

下記の2つの映像は、YouTube上に公開しているものだが、いずれも私がある企業を訪問した際に、その場で撮影し、その場で編集し、アップロードした映像である。

http://www.youtube.com/watch?v=Aa-e1v0iRHk

「部外者(訪問者)」である私ができるのだから、その会社の経営者・従業員ができないはずはない。
やろうと思えば、毎日できるのである。
経営者や従業員本人が顔出ししなくても、自社の商品やサービスの映像や顧客の声(インタビュー等)があれば、十分な作品に仕上がるであろう。

また、下記の映像は、私が顧客として訪問した飲食店で収録・編集したものである。出張先などで一人寂しく酒を飲んでいる時には、格好の暇つぶしになる(笑)。一番下の「金沢で飲むなら〜」などをご覧いただければ、必ずしも、撮影者自身が登場しなくても、作品になることはお分かりいただけるだろう。

 

 

 

さてさて。
セルフ・ブランド・マネジメント(SBM)に関する1〜2日モノの研修メニューを作成してみた。
もちろん、SBMは一日にしてならず… 継続的な能力開発が必要だ柄、とりあえずイニシャル研修はこんな感じでいかがだろうか。

1.セルフ・ブランド・マネジメントの時代
(1) 人材多様化の時代
① ダイバーシティの時代
② 人材調達方法の多様化
(2) 人的交流多様化の時代
① SNS時代における人と人との接し方
② 大企業不利の法則
③ 足を使わない営業は可能か?
(3) プロモーション手法多様化の時代
① SNSによるプロモーションの成功企業
② セルフ動画プロモーションの成功企業

2.セルフ・ブランド・マネジメントの考え方
(1) セルフ・ブランド・マネジメントとは何か
① セルフ・ブランド・マネジメントの定義
② セルフ・ブランディングとの違い(企業の巻き込み)
(2) セルフ・ブランド・マネジメントの代表例
① 大手製造業従業員A氏の事例
② 経営コンサルタントB氏の事例
③ 中小企業経営者C氏の事例
(3) セルフ・ブランド・マネジメントの功罪
① セルフ・ブランド・マネジメントの3大メリット
② セルフ・ブランド・マネジメントのリスク
③ セルフ・ブランド・マネジメントにおけるリスク回避の方法
(4) セルフ・ブランド・マネジメントの要素
① ターゲットの設定
② 中核的自己の決定
③ 基本的な表現力の習得
④ 情報の発信
⑤ プロモーション・シナリオの構築
⑥ 人脈構築戦略の決定

3.ターゲッティングと中核的自己の発見

(1) エレベーター・トーク①【演習】
(2) エレベーター・トークの振り返り
(3) ターゲッティングの重要性
(4) 自分探しゲーム【演習】
(5) ゲームの振り返り
(6) 中核的自己の仮説づくり
(7) エレベーター・トーク②【演習】
(8) エレベーター・トークの振り返り

4.セルフ・ブランド・プロモーション
(1) 方法論の列挙
(2) 方法論の順位付け

(3) 方法論集中の論理
(4) 方法論のTMP分析(時間・予算・人員構成)
(5) 方法論の相互作用
(6) 方法論のシナリオ効果
(7)  方法論の決定
(8)  セルフ・ブランド・プロモーション計画の策定【演習】

【オプション】
セルフ動画プロモーションの知識とノウハウ

※ 希望者のみ
(1) iMovieの基本操作
(2) シナリオの作り方
(3) 基本的な演出の方法
(4) セルフ動画撮影演習【演習】
(5) セルフ動画上映会
(6) 講評、配信の方法、効果・リスク
(7) セルフ・ブランド・マネジメントへの活かし方

2013年3月14日

組織間斥力の法則

自然科学における代表的な法則に「万有引力の法則」がある。
万有引力とは、すべての物体の間に作用する引力であり、その大きさは2つの物体の質量の積に比例し距離の2乗に反比例するというものである。
質量の大きな物質に働く万有引力が大きく、小さな物質に働く万有引力が小さくなる。
りんごに働く万有引力は無視できるほど小さいが、地球に働く万有引力は非常に大きくなる。

この現象は、自然科学(ニュートン力学)の世界だけではなく、経営学の世界でも確認することができる。

たとえば、

① 売り場面積の大きな小売店の顧客吸引力は強くなる
② 大企業は中小企業よりもはるかに人材を採用しやすい
③ 上場企業のブランド力はとてつもなく大きな価値を有する

…等々。
枚挙にいとまがない。

組織の経営資源が大きくなれば、さまざまな点で強力な引力が生じるのである。
大きな組織ほど強くなるので、ここでは、この引力を組織間引力と呼ぼう。

しかし。
組織間には、引力のみならず、斥力も働く。
同一法人、同一グループに属する組織の間で、いつもいつも強力な引力が働くとは限らないのである(ニュートンの万有引力とは大きく異る性質である)

企業内競合。
グループ内競合。
部門長同士の足の引っ張り合い。
担当者の出世競争。
面子。
プライド。

こういった要因が複雑に絡み合い、マイナスの組織間引力、すなわち、組織間斥力が働いてしまうのである。

私が企業A社に所属するα事業部とβ事業部とおつきあいすることになったとしよう。
私からすれば、両事業部は、根っこを同じくする同胞(はらから)であるように見えるのだが、これが案外、グループ内では

「水と油」
「呉越同舟」

だったりする(【例】α事業部はβ事業部に対し、同じ時期に競合商品を発売するなど、露骨な嫌がらせを行う)。

そこまではいかなくても、

「日ソ不可侵条約」

のような状態担っている場合もある。
相互に対して中立の立場をとるというものである(【例】α事業部が困っていても、β事業部が積極的に救いの手を差し伸べることはないのである)。

A社の社外コンサルタントである私が、

「α事業部とβ事業部が手を組んで相互補完したら、とてつもないシナジー(相互作用)を発揮するだろうに」

と強く思っていても、あるいは、そう提案しても、御両人(α事業部・β事業部)はどこ吹く風…といったケースが実に多いのである。

この組織間斥力。
具体的な要因(原因)までわかっているにもかかわらず、けっこうやっかいである。

「わかっちゃいるけど、弱められない」

という組織が多いのだ。

特に、その地域のナンバー1企業や、その事業領域におけるガリバー企業ほど、組織間斥力が大きくなる傾向がある。

組織間で一致団結してことに当たらなくても、当面は潰れる心配がないという安心感が働くからである。

「外敵の台頭を待つしかないか…」

そう思って、治療を諦めている当該組織の構成員も多い。

自らの事業領域に強力なライバルが台頭してくれば、同一法人内・同一グループ内の組織間で足の引っ張り合いをしている余裕などなくなるからである。

先ほどの事例に戻れば、α事業部とβ事業部が私の提案を受け入れてくれるのは、強力なライバルが出現し、市場を席巻し始めた後なのだ。

「ほれ見たことか。今更手遅れだ」

…喉元まででかかっていても、この一言を飲み込み、なんとか最良の手段を講じるのが、私達コンサルタントの役割だと思うが、やはり、症状が進行してからの治療よりは、予防のお手伝いをしたいと思う。

ハッキング対策の専門家などが、ターゲットとなる企業をハッキングし、

「お宅の会社、セキュリティがまるでなっちゃいませんよ」

と悟らせ、契約を結ぶ…という話があるが、それに近いことはできないだろうか。
脱法行為をしたいということではない(念のため)。

本当にライバルが台頭してくる前に、危機感を持って備えていただきたいのだ。
残念ながら、なかなかうまいアイディアが湧いてこないが、諦めずに、訴え続けていきたいと思う。

組織間斥力問題ではないのだが、最近、クライアント企業で、そう簡単には変わらないだろうと思っていたある社内ルールが、私が主張していた方向に大きく変更された。
私の影響によるものではない。社員の皆さんのたゆまぬ「署名活動」(比喩表現である。そんなようなものという意味)の結果が、トップあるいは本社の主管部署を動かしたのかもしれない。
何事も、簡単に諦めてはいけないのだ。

さてさて。
組織間斥力の法則に立ち向かう良い方法はないものだろうか。

2013年3月8日

不敗のエレベーター・トーク(商品説明編)

ビジネスにおいてはスピードが重視される。

たとえば、自社製品の紹介活動を担当している時、無限に時間があれば、延々とその製品について研究し、最高の営業トークを開発することができるだろう。

しかし、現実には、必ず時間的な制約(準備時間の制約、説明時間の制約等)を受ける。

限られた時間で、自社製品の紹介をするにはどうしたら、いいだろうか。
今日は、「不敗のエレベーター・トーク(営業編)」ということで、考えてみよう。

僅かな時間であっても、次のようなプロセスを意識していただきたい。

1.ターゲットの仮説を立てる

商品紹介をする以上相手がいる。
おひとりの場合にはその方について、複数の場合には一番キーとなる人物やより多くの方が持っているであろう関心を仮定する。
「価格」に関心があるのであれば、価格を、「デザイン」に関心があるのであればデザインを、「機能」を重視されているのであれば、機能を中心に、話の組立を考えなければならないからである。
顧客の関心とは、言い換えれば、ニーズであり、解決してほしい問題である。

したがって、通り一遍等にカタログの1ページ目から商品説明すれば常にOKだ!とはいかないのが、営業の世界である。

2.説明する商品、説明する事項を絞り込む

これはケースによって異なるが、いずれにしても、全部の商品をまんべんなく説明するという愚を犯してはならない。
注目してほしい製品、目玉となる機能を中心に説明すべき内容を精査する必要がある。

① 製品の絞り込み

どの製品をおすすめするのかという絞り込みである。

② 事項の絞り込み

「1」に基づいて絞り込む。
たとえば、「機能」の場合であれば、さらにどの機能を中心に話すのか、言い換えれば、どの機能は話すのをやめてしまうのかを、思い切って意思決定する。相手の関心が薄いと仮定される項目はざっくりとそぎ落としてしまおう。

3.「コトの提供」について考えてみる

時間が許す限り、触知可能な製品やメイン・サービス(いわゆる「モノの提供」)だけではなく、他に提供できる「コト」がないか(「コトの提供」)に頭を巡らしてみよう。

合言葉は、

「サア夢経験、時空でライフ!」

である。

以下は単純だが、ちょっとした「コトの提供」の一例である。

① サ…サービスの提供
【例】今日会場にお越しいただいた方にだけなのですが、再来週のユーザー感謝デーにご招待させていただいているんです。よかったら、お越しくださいね。

② ア…アイディアの提供
【例】今日会場にお越しいただいた方にだけなのですが、私が作成した当該製品の裏ワザ・レジュメをお渡ししているんです。よかったら、お使いくださいね。

③ 夢…夢の提供
【例】これだけ高級感のあるテーブルがキャンプ・サイトにあったら、さぞ華やぎますよね。まるで、高級リビングみたいでしょう? 他のキャンパーの方々の注目の的になりますよ。

④ 経験…経験の提供
【例】ちょっとおかけになってみてください。はい。ハンドルも握っていただいて構いません。あ、キーがありますから、エンジンかけてみましょうか。いかがです? 静かですよね。まるで、ハイブリッド車みたいでしょう。では、このまま、ちょっとだけアクセルを踏んでみましょうか。あ、私、助手席に乗らせて頂きますね。

⑤ 時…時間の提供
【例】このショールーム自体がまるでミュージアムみたいになっています。とりあえず、「順路」という矢印に沿ってご覧になってみて下さい。なにかご質問があれば、腕章つけているスタッフにお気軽に声をおかけください。

⑥ 空…空間の提供
【例】お買い上げ頂いた商品ですが、あちらでそのまま召し上がって頂けるスペースをご用意しています。はい、靴を履いたままお進みいただいて結構ですので、そのままお進みください。左側のドリンクコーナーでお好きな飲み物をお取りいただいて構いまえん。どうか、おくつろぎください。

⑦ ライフ…ライフ・スタイルの提供
こちらの「水滴がつかない傘」は、できることなら、まずは、クルマの後部座席専用でおお使いいただきたいのです。オーナー様ではなく、ゲストの方専用の傘としてお使いいただきたいのです。雨の日、クルマに乗る瞬間に傘から落ちる雨水で、大切なゲストの方に、ご不快な思いをしていただきたくないじゃないですか。そうすることで、オーナー様の株も上がる…そんな傘なんです。あ、もし、オーナー様が普段お使いいただくのならば、是非、もう一本お買い上げくださいね笑

4.演出の方法を考えてみる

ここまで来れば、あとは楽なものである。
会場で使えるすべてのグッズを書き出し、

「使えるものは全部使う」

が基本である。

時計、紙、ペン、鉛筆、飲み物、ホワイトボード、マイク、プロジェクター、椅子、机、窓、空気・風、窓の外の風景、スタッフ、関係者、顧客同士、壁、電球、床、柱…

これらがすべて、皆さんの「武器」になる可能性があるのだ。

例えるなら、救命救急の医師である。

彼らは、要救護者の頭蓋骨に穴を明けなければならない場合、ドリルと使うこともある。気管に穴を空けなければならない場合、ボールペンを使うこともある(テレビの世界だけかもしれないが笑)

要は、そういった感覚が必要だ…という話である。

5.話の組立を考える

ここについては「不敗のエレベーター・トーク」を参考にしていただきたい。

不敗のエレベーター・トーク

キーワードをサッと書き出し、頭のなかでストーリーを組み立てる…慣れないとしんどい作業だから、毎回、顧客の前で話す際に、組立のシミュレーションを行なってほしい。
1年もすれば、楽に組み立てられるようになる。

2013年3月7日

セルフ・ブランド・マネジメントにおけるブルー・オーシャン創造戦略

今日は午前中から打ち合わせ。
午後もクライアント企業で、セルフ・ブランド・マネジメントについて盛り上がってしまった。

どのような自己紹介が最も価値があるか…を追求していらしゃる企業。
私がセルフ・ブランド・マネジメントだの、不敗のエレベーター・トークだのと申し上げるはるか以前より、自己紹介を科学することに重きをおいていらっしゃる企業だったからである。

4月に2日間かけて、自己紹介をメインテーマで研修させていただくことになったのだが、またまた大変楽しみな研修である。

 

奇しくも、今週は、セルフ・ブランド・マネジメント週間(勝手に笑)!

今日は、セルフ・ブランド・マネジメントにおける「中核的自己の形成」について、少し掘り下げて考えてみたいと思う。

 

1.セルフ・ブランド・マネジメントにおける必要的補助輪

セルフ・ブランド・マネジメントを考える上で大切なのは、お金よりも友達である。

特に自らのセルフ・ブランド・マネジメントについてのある程度のプランができている方の場合、親しい友人の意見やアドバイスにまさるコンサルティングはあるまい。

今週、私は3人の方にアドバイスをしたが、1人が仕事上のパートナー、もうお2人は今のところほぼ完全な友人である(今後、パートナーになるかもしれないが、いまのところ、パートナー候補者である)。

中小企業診断士の受験対策講座におけるカウンセリングであれば、初対面の方であっても可能であろうが、セルフ・ブランド・マネジメントに関するカウンセリングは、その方をよく知っていなければ、どうすることもできない。

友達でなければ、手助けできないのだ。

また、まるっきり一からセルフ・ブランド・マネジメントの設計を委託されるような相談もお断りである。
当たり前である。
それでは、「セルフ」にならないからだ。

覚悟のない方のご相談もお断りである。
セルフ・ブランド・マネジメントは大きなリスクを伴う。
「あれもこれも」することはできない。
中核的自己の形成の基本戦略は「集中」しかないのだ。

「あれもこれも」やりますというセルフ・ブランド・マネジメントは存在しないのだ。

「あれもこれもやるのが自分の個性です」

というのは、結果の話である。
セルフ・ブランド・マネジメントが一定の段階に入り、大きな重力を持ち、ブラックホール効果が得られた場合の結果である。

「一点集中」でセリフ・ブランド・マネジメントを徹底追及するからこそ、いわば、ついで的に、「あれもこれも」仕事が入ってくるのである。

そのことを多くの方が

「総論(一般論)として理解していながら」

「各論(その方ご自身に当てはめた場合の理論)としては理解できていない」

のではないかと思う。

相談にお越しになる方の悩みが驚くほど似ているから、仮に私が担当したセルフ・ブランド・マネジメントに関するカウンセリング・シーンをすべてビデオに撮っておいたとして(むろん、実際には撮影していません。お越しになったかたはご安心を笑)、それをご覧になった方はさぞ驚かれることと思う。

誤解のないように申し上げるが、ご本人が悪いのではない

セルフ・ブランド・マネジメントを追求しているご本人は、野球のバッター、テニスのプレイヤーのようなもの。
必ず、外から客観的にフォーム・チェックしてくれる人が必要なのだろう。

マス広告やダイレクト・メール、足を使った通常の営業ではなく、SNSをフルに活用した人脈形成によるセルフ・ブランド・マネジメントにトライしてきた私の場合、Facebook上の友人たちが、その役割を担ってくださった。
例の火曜日開催の「ビジネス雑談サロン」の常連諸氏は、「私の家庭教師である」と常々お話してきたが、皆さんがフォーム・チェッカーの役割を果たしてくださったのである。

もう一度申し上げる。
ご本人が悪いのではない。

私を含む多くの方が同じ課題をもっていらっしゃるのだろう。
自分の顔を絶対に自分の目で見ることができないのと同様に、外界と遮断された環境で、セルフ・ブランド・マネジメントを追求していくことは、本質的に不可能なのだ。

2.圧倒的情報創造の必要性

話を元に戻そう。
「あれもこれも」という中核的自己の形成というのは、少なくとも、これからセルフ・ブランド・マネジメントを始めようとしている方にとっては、避けるべき方針であろう。

中核的自己の形成で重要なのは、ある特定分野における圧倒的な知識と情報、経験と実績である。

私が30代、なぜ、「おいしそうな仕事」をほとんど避けて、中小企業診断士の受験対策講座に専念してきたのか。

いろいろな理由があるが、そのうちの1つは、それが最もマーケティング戦略上有効だったからである。
その業界における第一人者になったほうが、多くの人の記憶に残るからである。
指名購買機会が増えるからである。
イアハート効果が発生するからである。

先日、ある方にお話したのが、

「あなたの得意とする分野について、A4判で600ページくらいの情報があれば、まずはスタート地点としては合格ではないか」

というメド値である。

他人の受け売りだとか、インターネットのコピペで600ページという意味ではない。
全部、オリジナル。
自分の知識と経験、自ら取材したり調べたりした情報を自分の言葉にしたつもりで、600ページ。
経験が少ない分野であれば、圧倒的な勉強によって知識を得て、補うしかない。

何を聞かれても分かる状態。

「◯◯オタク」

をめざすという意味である。

600ページというには、いい加減な数字ではない。

600ページのうち、最初の概論200ページは一冊のテキストが書けるというレベル。
当該分野において、

『早わかり! ◯◯入門』

的な書籍が書けるレベルのための知識である。

残りの400ページは、それについての講演やセミナーの依頼が来た時の

「持ちネタ」

であり、顧客が訪ねてきた時の営業用の情報であり、相談を受けた時の回答のためのデータである。

「とっておきの情報」

である。

むろん、そのうちの200ページを2冊めの書籍として世の中にリリースしてしまっても構わない。
ただし、そうなれば、またまた200ページ分のインプットをしなければならなくなる。

常にインプット(情報収集・経験・勉強)とアウトプット(情報の公開、リリース)のバランスを考えなければならない。

3.ブルー・オーシャン創造戦略

ある特定分野において、600ページ分のオリジナル情報を持っている同業者がそばにいたら、私は少なくともその分野における

「競争回避」

を考えるだろう。

もちろん。こちとら15年選手。
手を変え品を変えいろいろやれば、勝てるかもしれない。
2年くらいその分野について圧倒的な後追い勉強をすれば、勝てるかもしれない。
が、あまりにも投資効率が悪い
だから、

「競争回避」

を考えるのだ。

ガラガラヘビが「ガラガラ」と音を立てるのは、威嚇の意味があるそうだ。

「ガラガラいっているのは、ここにガラガラヘビたる僕がいるという証拠だよ。無用な殺生はしたくないので、できれば、僕を避けて通ってね」

という競争回避を促すサインなのだろう。
なるほど、確かにそのとおりだ。餌をとることが目的で噛み付くなら、わざわざ音をだす必要はないのだ。

セルフ・ブランド・マネジメントにおいても、ガラガラヘビに見習おうではないか。

「私はこの分野において、600ページ分のオリジナル情報を持っているんだ。無用な競争はしたくないので、できれば、私を避けて通ってね」

ということである。

A4判600ページの資料(文字はびっしりと仮定する)をすべて講義したらどれくらいの時間になるだろうか。
1ページ10分かかるとして、6ページで1時間。
つまり、600ページで100時間分である。

1日6時間の講義100日分。
1回2時間の講演300回分。

けっこうな分量である(もちろん、実際には、すべての内容を人前で話す必要はないだろうが、概ね、それくらいの知識があるかどうかと考えていただきたい)。

だからこそ、誰も競争参入しようとしなくなる。競争回避したがるのである。

「そこまで積み上がるのは難しい」
「自分にはできそうもない」
「厳しいことを言うなあ」 

と諦めてしまう前に、もう一度考えてみよう。

およそ、知的なビジネスにおいては、「考える」ことによって生み出される知的財産が最大の経営資源になる。セルフ・ブランドの価値の向上も「考える」ことから生まれてくる。

工場を立てる必要も、流通センターを整備する必要もない。
それでも、ビジネスを始めることができるのだ。むしろ、リスクが小さい点に注目すべきである。
その代償として、他人(クライアント)の10倍、100倍の知識や情報が必要になるのは当然のことである。

「情報在庫」
「知的在庫」

の負担と考えてもよいだろう。

 

私たちは、

「ブルー・オーシャンを探索する」
「ブルー・オーシャンを発見する」

ことに終始しがちである。

しかし、本来、

「ブルー・オーシャンを創造する」
「今いる環境を、ブルー・オーシャンに変えていく」

ことこそが重要なのではないか。

ホトトギスやカッコウは托卵という習性を持っている。
母鳥は別種の鳥の巣に自分の卵を産みつける。その巣の本来の主の雛達が孵化する前に孵化し、自分の周りにある卵を皆巣から落としてしまい、別種である「継母」を独占するという。

これこそが、見事な

「ブルー・オーシャン創造戦略」

である。

30代の10年間。私もブルー・オーシャン創造戦略を多用してきた。
それを不快に思っていらっしゃる先輩や同業者の方々も多いと思う。
むろん、汚い手をつかったわけではなく、真正面からビジネス上の勝負を挑んでの結果であるから、それを悔いたり、はじたりしているわけではない。

「600ページ分の知識」

というのは、自分の周囲に大きな参入障壁を気づくことになるから、結果として、

「ブルー・オーシャン構築戦略」

にもなるわけである。

1年なり、2年なり。

どっぷりと、ブルー・オーシャン構築戦略に浸かってみよう。

三匹の子ぶたに例えるなら、藁の家や木の家ではなく、強固なレンガの家を創ろう。
自らの知的居城、自らの知的根城を創ろう。
それが、セルフ・ブランド・マネジメントの大きな第一歩になることは間違いないだろう。

「1年で600ページ」

というとすごい量のように感じるが、割り算すると、およそ

「1日2ページ」

となる。

不可能な量ではない。「1日20ページを1年間!」などというとんでもないことを申し上げているわけではない。
中くらいの難易度の国家資格の試験勉強と同等程度の分量ではないだろうか。
少し長いブログと同じくらいの量かもしれない。

顧客とのやりとり、パートナーとの何気ない会話、食事中、入浴中、トイレの中、通勤途上、本を読んだり、テレビを見たりしながら、いろいろな刺激が生まれてくる。

「これを私の専門としたい特定領域で活かせないか」

と延々と自問自答していけば、いろいろなアイディアが生まれてくると思う。
とてつもない発想法や思考法が必要なのではない。
必要なのは、

「覚悟」

「持久力」

であろう。

たとえば、多くの方は、今時のスマホで音声入力できることは知っているが、使っている方はどれくらいいらっしゃるだろうか。

私は友人と酒を飲みながらでも、思いついたアイディアは、その場で吹きこむことにしている。
先日、つい、吹きこみ忘れて、そのアイディアを思い出すために、友人と30分くらい

「今、何を吹き込もうとしたのか」

について、レビューしてもらった。思い出せそうで思い出せない状態が続くのは苦痛である。
その時は、トイレに立った時に思い出し、笑い話となった。
もし、本当に思い出させなかったら、さぞ、辛かったと思う。

「知っている」「実践する」との間には百万光年くらいの差があると思う。
私は、「知っている」ことを披露する人よりも、「実践している」 ことを伝えてくれる友人の言葉を高く評価しているし、自らもそうありたいと思っている。

 それでも。

1年やっても、2年やっても、目が出ず、何らの成果も得られない場合にはやり方を再考しよう。
ベストを尽くし、あらゆる手段を講じても、手が届かない分野というのも存在するだろう。
その場合には、選択すべき「特定分野」が間違っていたのかもしれない…という勇気を持とう。

もし、私の友人がそういう状態に陥っている場合には、いくらでも相談をお受けしたいと思う。
微力ながら、全力でサポートさせていただきたい。

2013年3月6日

あなたにそっと教えるセルフ・ブランド・マネジメントの基礎知識

Ⅰ.SBMの概要

1. セルフ・ブランド・マネジメントの概念

(1) SBMの定義

「セルフ・ブランド・マネジメント(SBM:Self Brand Management)」とは、自らを自らが売り込むセルフ・ブランディングと、企業が従業者の個性を売り込むパーソナル・ブランディングを包括する概念である。最終的には、自らのブランド価値を高めるために、自分自身のみならず、所属組織・関係者をどう巻き込み、どう活用していくかというところまで考えなければならないだろう。

SBMは、自分自身・所属組織・上司・部下・同僚・顧客・友人等の人的ネットワークを通じて、プロモーションを展開することが前提となる。彼らをどのようにマネジメントするか、その具体的な手法を見つけられるかどうかがポイントである。

(2) SBMの領域

SBMは、自作自演を中心としたセルフ・ブランディングと、組織の一員として展開するパーソナル・ブランディングとに大別できる。

「セルフ・ブランディング」は、商品が自分であり、売り手も自分であるから、その直接性に最大のメリットがある。売り手は完全に商品のことを把握しており、精力的に活動するから高い効果が望める。一方、商品機能と販促機能が同一人物に帰属するため、負担も大きい。忙しい人には向かない手法である。

「パーソナル・ブランディング」では、商品は従業員であり、売り手は所属組織(企業)である。両者の利害関係が一致していれば、最高の役割分担が実現する。従業員は自らのブランド価値を企業が高めてくれるし、企業はそこから一定の利益を享受できる。しかし、一度両者の利害関係が崩壊すれば、存続は難しくなる。

セルフ・ブランディングは自分で自分をアピールしていく手法だが、SBMでは、所属組織に自らの売り出し方を提案したり、伝達したりすることも重要な行動となる。個人が始めた動画プロモーションに所属組織が後乗りし、大規模化していくケースなどは典型的なSBMの成功事例である。

著者の場合、Facebookやビジネス雑談サロン、ブログ、YouTube動画を通じて、情報を発信しているが、こちらはセルフ・ブランディングである。ただし、ここから生じた売上はすべて会社に帰属させている。その一部が著者の年俸になるというしくみである。

また、㈱経営教育総合研究所や子会社の㈱TBCあるいはTBC受験研究会から、著者の名前で書籍や雑誌に名前が出ることもあるし、DVDの発売もしている。こちらは完全なパーソナル・ブランディングである。

(3) SBMの3大効果

SBMには次のような3つの効果がある。

①ビジネス上の成功を収め、経済的な利益を享受できる(経済的効果)、②本人の承認欲求・自尊欲求・自己実現欲求が満たされる(心理的効果)、③個性が豊かで生き生きとした組織成員が増えれば組織の活性化が実現する(組織的効果)、である。

 

 

2. SBMのリスク

(1) トレードオフの問題

SBM(SBM)には金銭的な投資・費用はほとんど必要ない。しかし、手間暇はかかる。本腰を入れるならば、他の営業・販売活動をほぼすべて停止し、SBMに注力する必要がある(トレードオフの問題)。著者の場合、足を使った営業の時間、書籍の執筆にかかる時間をすべて停止し、SBMに集中した。

SBM(SBM)には常に「覚悟」の問題がついて回る。SNSの発達により、お金をかけずにSBMを実現できるようになったが、人並みの手間暇で自動的に自己のブランド価値が上がるわけではない。他の方法を捨ててでも、SBMに賭けるという「信念と忍耐」が不可欠である。

(2) 情報発信リスクの問題

「情報の発信によるシグナリング効果の発生」というのが、SBMの基本スキームである。したがって、SBMを展開する際には、常に情報発信リスクの問題がついて回る。

情報を発信する際には、機密情報を除くことは当然だが、本来有料で提供している本業情報の発信も控えるべきである。本業と隣接する領域の情報(本業関連情報)を発信し、ハロー効果を狙うのが得策である。親しみを出すために、一部、プライベートな情報を出すなど、本業非関連情報をエッセンスとして用いることも時として有効である(著者はこの方法を採用している)。

SBMの成否は、発信する情報の頻度と量の多寡により左右される。機密情報と本業情報に抵触しなければ、発信頻度は高いほうがよいし、情報量は多いほうがよい。
最大限の手間暇をかけるべきである。ただし、途中まで「美味しい情報」を出しておいて、頁をめくると途端に「無料視聴はここまでです。ここから先は有料となります」といった安っぽいシナリオは元に慎むべきである。発信し、提供する情報には、都度、自己完結性が求められるのである(無料情報を連載形式で発信する方法はもちろん問題ない。無料で結末を知ることが担保されているからである)。

 

 

3. SBMの個別懸案事項

SBMを展開する際、特に重要な必要事項を列挙すると次のようになる。次章で、これについて詳述したい。

① ターゲットの設定
② 中核的自己の決定
③ 基本的な表現力の習得
④ 情報の発信
⑤ プロモーション・シナリオの構築
⑥ 人脈構築戦略の決定

 

 

 

II. SBMの個別懸案事項

1. ターゲットの設定

(1) ターゲットの設定

SBMを進める上で最も重要なのは、ターゲットの設定である。「あなたは誰に向けて情報を発信しているのか」と問われ、即答できないならば、その人のSBMが遠からず破綻を迎えることは想像に難くない。

ターゲットを設定しないで、SBMを続けても、単なる自己満足であり、ビジネス上の成果を得ることは難しい。趣味やボランティアとしては成立するし、自己満足を得ることは可能だが、経済的利益を獲得することは極めて困難である(まぐれ当たりを期待するしかない)。ターゲットが不在だということは対価を支払ってくれる顧客の存在を無視したしくみであるためである。ターゲットを設定しないでSBMを続けることは、土台を作らずに家を立てるようなものである。

(2) 発信情報の量と頻度

SBMを推し進める個人が発信する1回あたりの情報量は多いほうがいいか少ないほうがいいか、悩まれる方が多い。ブログの長さ、メルマガの文面、手紙の文章、配信する動画の尺…

答えは至って簡単である。ターゲットによる。重厚長大な情報を必要とする少数のターゲットに情報を届けたいならば、長くても構わないが、ライトな情報を大勢の人に伝えたいのならば、短いほうがよい。

著者の場合、顧客数は少数でよいのだが、個々の顧客とのビジネスは大きなものにしたい。したがって、発信する情報は重厚長大なものが多い。ブログは長いし、YouTube動画も長い。しかし、わざわざ長いブログを読み、長い講義動画を視聴して下さった方は有力な見込客であることは疑いの余地がない。2〜3分の著者の動画で飽きてしまう方は、そもそも著者のターゲットではない。

(3) ターゲット・マーケティングのブラックホール効果

SBMにおいて、ターゲットを絞った集中戦略(集中化戦略)をとることに抵抗を感じる方が多い。「仕事の幅と顧客の幅が狭くなる」リスクを憂いとされているからである。

しかし、 おそらくは、その心配は必要ない。ターゲット・マーケティングのブラックホール効果(BHE:Blackhole Effect)が生じるからである(詳細は、こちらを参照していただきたい。http://t.co/S8lkAwsO)

著者は、以前からお世話になっている2社を除き、新入社員研修をお引き受けすることはない。著者の講義の主要対象が上場企業の部課長や中堅社員層であるからである。しかし、講義が終わると、「若手の研修をお願いできないか」という専門外の領域に対する打診をいただくことが多い。これが、BHEである。

自分が掲げるドメイン(事業領域)以外の業務が舞い込んできた場合、お引き受けするべきか、お断りするべきか。これまた答えは簡単。対応できるならばお引き受けするべきであろう。せっかく、BHEが運んできた仕事である。時間的・精神的余裕があるならば、お引き受けするのが自然である。ただし、自らが抱えるドメインの業務で「イッパイイッパイの状態」にあるならば、お断りすべきである。「この人は本当の専門家なのだ」と相手は理解し、自己のブランド価値は上昇するからである。

ドメインをしっかりと掲げる専門家だからこそ、人は頼りたくなる。名刺の裏に「何でも引き受けます」と言わんばかりに対応可能業務が並んでいる方を見ると幻滅する。裏を返せば、「何もできません」と触れ回っているようなものだからである。

著者のドメインは「消費財メーカーの事業計画策定と販売促進計画の策定、それに伴う組織づくり・人材づくり」である。しかし、ターゲット・マーケティングのブラックホール効果のおかげで、多くのドメイン関連領域業務に巡り会えた。

金融機関関連の仕事が増えたのも、彼らの多くがメーカーをクライアントに持っていらしゃるからである。ベースとなっている中小企業診断士の受験対策の知識も時として大変役に立つ。ドメイン関連領域業務の打診を頂いた時には、あるときはお引き受けし、ある時はお断りする。その繰り返しでこれまでやってきた。最初から「何でもやります」と言っていたらこうはならなかっただろう。

 

 

2. 中核的自己の決定

(1) 中核的自己の決定

SBMにおいて、次に重要なのは、「中核的自己の決定」である。ターゲットに対し、「どんな自分を見せていくのか」という自分像を決定する段階である。個性・高付加価値化・差別化・希少性が重要なのはいうまでもない。製造業における製品戦略の策定に当たるプロセスである。

(2) 中核的自己の3つの要素

SBMを展開する際に、「中核的自己」を発見・決定できない場合には、次の3つの要素に留意し、候補を洗い出してみよう。①可能性要因(自分ができることは何か)、②意欲性要因(自分が没頭できることは何か)、③意義性要因(社会や顧客が喜んでくれるのはどんなことか)。

イメージのわかない方は、①自分のできること、②自分ややりたいこと、③社会的に意義のあることを紙に書き出し、①②③のいずれをも満たす要素、あるいは、将来的に満たしうる要素を、選択してみよう。意外な「中核的自己」を発見できるかもしれない。

(3) イアハート効果の活用

SBMにおいて、売り出したい中核的自己が発見できないのは、本人の理想が高すぎる場合が多い。業界ナンバー1といえるような特殊な資質・才能・経験がなければならないわけではない。限られた領域の中での何らかのナンバー1(オンリー1)といえるものがあればそれを核に据えればよい。

大西洋を3番目に横断したアメリア・イアハートの名前を知るアメリカ人は多い。最初に横断したチャールズ・リンドバーグが有名なのは当然だとしても、なぜ、3番目に横断した彼女が有名なのか。女性だからである。業界全体のトップではなくとも、限られた領域の中でのトップになれば、その知名度は上昇するのだ。

アメリカ人の間で、大西洋を3番目に横断した女性・イアハートが有名である現象は、マーケティングの世界で、「イアハート効果」と呼ばれるようになった。SBMを考える際に、売り出したい「中核的自己」にイアハート効果が発生しているか、今後発生しうるかを考えてみよう。

中核的自己の形成には、イアハート効果の発生が重要である。著者の場合、転職後の初期の段階においては、中小企業診断士の受験対策講座の講師という業務を選択した。コンサルティング業務や企業研修は転職後の5年間はほぼまったく引き受けなかった。ただ、イアハートになるためにすべての時間を注いだ。

(4) 中核的自己の創出

それでも売り出すべき「中核的自己」を発見できない場合には創出すればよい。①可能性要因、②意欲性要因、③意義性要因の積集合の中から、「これだ!」というものを発見し、短期集中で研究し、それを極め、一気にオンリー1に駆け上がる。中核的自己さえあれば、あとはプロモーションの問題だけである。中核的自己の決定に比べれば、プロモーションの問題など楽なものである。

中核的自己を創出する際に役に立つのが、インキュベーターや練習台、テスト・マーケティングの場の設定である。著者の場合、早朝や深夜の空き教室は講義の練習の絶好の機会になるし、撮り直し可能なビデオの撮影は鍛錬の場となる。優秀な同僚や友人がそれにつきあってくれれば、さらに効果は高くなる。毎週火曜日に開催している「ビジネス雑談サロン(雑サロ)」も重要な場となっている。雑サロは、今や、著者にとっての「万能の作業場」である。商品開発の場であり、テスト・マーケティングの場であり、プロモーションの場であり、パートナーや顧客発掘の場となっている。

SBMにおいて、中核的自己とターゲットは、一方だけが先に決まるものではない。①可能性要因、②意欲性要因、③意義性要因を総合勘案する過程で同時に決定されなければならない。「誰に(ターゲット)、何を(中核的自己)をどう提供するのか」が確定するということは、それにより、セルフ・ブランド・ドメイン(SBD:Self Brand Domain)が決定するということである。

(5) 意外性のマーケティング

以前に、Twitterに次のような投稿をしたことがある。

次回のパーティで、ゲストをどうやって驚かそうかと知恵を絞る方は多いが、次回の訪問で、顧客をどうやって驚かそうかと頭をひねる方は少ない。パーティであれ営業であれ、重要なのは「意外性」。ただし、手間とコストはかけたくない。手間暇かけずに、どう驚かすか…それを考えるために脳があるのだ。

SBMではターゲットへの対応が大切だが、問題はそのレベルである。「ターゲットのニーズに対応した便益の提供」という必要条件・衛生要因を満たすのは当然のことであり、「ターゲットの予想を越える意外性・驚き・感動・印象の提供」という十分条件・動機づけ要因への対応の是非で差がつくのである。

経費と手間暇をつぎ込めば、顧客に「意外性・驚き・感動・印象」を与えることは可能である。組織的・全社的なマーケティングならばそれもできる。しかし、SBMの場合、限界がある。そこで、SBMならではの安くて手間いらずのツールの採用を考える。iMovieによる動画の撮影・編集・配信はその典型である。

意外性のマーケティングは、SBMにおいても重要な方針であるが、これを具体化するためには、シグナリング効果を活用するのが上策である。

(6) シグナリング効果

「世の中には、持続性の低いセルフ・ブランディングの事例が多すぎるのではないか」。雑サロに出席してくれた友人からの鋭い指摘である。まったくもって同感である。花火のように登場し、飽きられ、消えていく。実にはかない。事業としてSBMを考える以上、持続性がなければならない。それを実現するためのキーワードこそがシグナリングである。

「シグナリング」は、経済学やマーケティングの世界で頻用されるようになった概念である。SBMにおいては、「個人が少しだけ無理をし、少しだけ背伸びをしている状態の時に、社会や顧客が振り向いてくれる」という効果を指す。「ハッタリバレバレ」の背伸びは不要。「少しだけ」が持続の秘訣である。

世の男性が女性に愛を告白する時に、ちょっとだけ高価な薔薇の花束を送るのはなぜか。シグナリング効果が生じるからである。

シグナリングには2つの要件がある。

1つは、「コストや手間がかかっているという事実」である(努力要因)。小さな無理、小さな背伸びであっても、ある程度の努力は必要がある。「ちょっとだけ高価な薔薇の花束」は、彼の努力の象徴である。あまり無理をされてとんでもなく高価なプレゼントを用意されたのでは、彼女は引いてしまうが、「少しだけ無理」をしてくれたことに彼女は心惹かれるのかもしれない。

もう1つは、「小さな無理や背伸びが、ターゲットに到達しているという事実」である(到達要因)。人知れず努力するだけでは何の効果も発生しない。告白の瞬間に薔薇を手渡しするのではなく、彼女の家に「花束宅急便」で届けていたらどうなっているだろう。彼の努力は告白の瞬間、彼女には到達せず、失敗に終わり、帰宅後に彼女は振ったばかりの相手からの花束を受け取る。なんとも間の抜けた話である。努力した事実は相手に到達させなければならない(奥ゆかしさは必要だが)。

わが国には無条件返品保証をしている企業は多いが、多くの企業は、クレームがあった場合への個別対応など、消極的展開に終始している。しかし、六花亭製菓などの、一部の企業は、HPやパンフレットに堂々と謳い、マスコミの取材にも応じるなど、積極的に「宣言」している。シグナリングが発生するのは、企業努力が社会に到達している後者の場合である。

Twitterをジャスト140字と決めているのも、名刺に「緊急連絡先」を明記しているのも、講演原稿の最後のスライドに「24時間営業年中無休の精神で対応します」と申し上げるのも、毎週というハイペースで雑サロを開催目標を掲げているのも、Facebookへの情報発信頻度が少し高いのも、すべて、これは著者がシグナリング効果の発生を狙っての演出なのである。

このようにタネあかしをしてしまっても一向に構わない。やっていることに嘘偽りはないし、努力要因・到達要因いずれも満たしている状態に変化はないからである。

(7) 微細差別化蓄積の論理

SBMにおいて、希少性の高い特徴(才能や経験)を自らが持っていれば。それに越したことはない。しかし、誰もが何かの分野で天才的な才能を持って生まれてきたわけではないし、とてつもなく特異な体験をしたわけでもない。フェルマーの最終定理を証明することはできないし、エベレストの登頂経験などないのが普通である。

ご安心いただきたい。希少性の高い特徴(才能や経験)を持っていない場合には、「微細差別化蓄積の論理」に基づき、中核的自己を形成すればよい。微細差別化蓄積の論理とは、「それほど希少性のない差別化要因でも掛けあわせていくと、差別化の度合いが上がり、非常に希少な存在とみなすことができる」という考え方である。
将棋もそこそこ、カラオケもそこそこであっても、将棋を指せて、歌も歌える…となると、ぐっと希少性が増すという論理である。

さまざまな「ちょっとした差別化」であっても掛けあわせていくと、稀有な「中核的自己」を構成することができる。浦和生まれで、化粧品業界に強いコンサルタントで、中小企業診断士の資格を持っており、管理職教育の経験が豊富な人材…となれば、そうはいないだろう。イアハート効果が生じる可能性は大である。

「微細差別化蓄積の論理」は、「ちょっとした差別化」要因であっても、それなりに価値はあるということを示している。しかし、本人が努力せずに得た先天的な差別化要因(【例】浦和生まれ)よりは、本人が努力せずに得た後天的な差別化要因(【例】中小企業診断士資格の保有)のほうが、より強い要因である。先天的な差別化要因だけに頼らず、後天的に取得できる差別化要因を増やすために努力を重ねることはやはり重要なのである。

 

 

3. 基本的な表現力の習得

(1) 基本的な表現力

SBMの中でも、自らが自らを売るセルフ・ブランディングの場合には特に、「基本的な表現力」は不可欠な要素となる。自分で自分を上手に表現する必要があるからである。あくまでも、基本的なレベルをクリアしていれば問題ない(後は内容で勝負できるからである)。これについては、短期間でよいので、プロの指導者に、書き方や話し方の指導を受けるのが早道である。

「書く力」については、基本的な文章法を学ぶのは当然だが、上達するためには、一定の添削を受ける必要がある。著者の場合、人生において2人の頭が上がらないほどお世話になった添削者がいる。一人は前職時代の上司(この方はとてつもなく企画書の作成がうまかった)、もう一人は、やはり元上司株式会社TBCの創始者・木下安司先生である。日経文庫を始めたくさんの著作のある中小企業診断士業界の巨人である。優秀な添削者に恵まれないと、「書く力」はいくら書いても上達しない。

「話す力」については、さまざまなトレーニング法が存在するが、以前にYouTube「日本一短い経営学」に「無敵のプレゼンテーション」という動画を5本アップしてある。全部見ても1時間に満たないショート・ムービーである。よかったら、是非、参考にしていただきたい( http://t.co/ZlXA5tPG)。

(2) ピーク・エンドの法則

「基本的な表現力」を身につける際に、注目したいのが「ピーク・エンドの法則」である。

ダニエル・カーネマンが提唱した経済学の概念だが、プレゼンの際にも有効な考え方である。これを知ると、アガリの克服のためにいろいろな努力を講じることにあまり意味がないことがよくわかってくる。 「終わりよければ全てよし」という諺があるが、これをさらに発展させた考え方が、カーネマンのピーク・エンドの法則である。

詳細は以前に、ブログ「140字『超』の経営学」の中で述べている。こちらを参照していただきたい(http://t.co/b2vcbToY)。

 

 

4. 情報の発信

(1) 情報発信戦略の重要性

「情報の発信によるシグナリング効果の発生」というのが、SBMの基本スキームである。ここでは、SBMにおける情報発信の重要性について考えてみよう。

世の中のマーケティングの教科書を読み返して不可解に思うのは、情報の収集についてはさまざまな方法論が語られているのに、情報発信の方法については、プロモーション戦略の一部として軽く触れられるに留まる点である。今や、「モノからコトへ」の時代。製品戦略以上に重要なのは情報発信戦略である。

(2) 万能のベクトル

SBMにおいて、情報発信はいろいろな方向に作用する「万能のベクトル」となる。

①直接的な営業につながる場合もあるし、②パートナーとの出会いの契機にもなるし、③営業を代行してくれる口コミ母細胞的友人(後述)への報酬にもなる。
逆にいえば、情報発信しない方は、①②③いずれにおいても苦労されることになる。別な営業方法を考えなければならないし、パートナー探しの方法を考えなければならないし、営業代行者への報酬を考えなければならなくなる。

情報発信をマメにしておくと、①②③いずれにも役に立つので、実はもっとも楽ができるのだ。多くの方はそれがわかっていない。

ブログやFacebookなど、SNSの世界などを見ていると、有益な情報を発信している発信者は少数で、情報を享受している方の数は多数である。有益な情報を発信さえすれば、それだけで希少性を獲得でき、「売り手」としてはかなり優位なポジションに立てるにも拘わらず、そこに立つことを多くの方は躊躇している。理由は簡単。「面倒くさい」「ネタがない」「書くのが苦手」の三拍子である。

(3) 情報発信のためのネタ探し

前述のとおり、情報発信というと、「面倒くさい」「ネタがない」「書くのが苦手」と消極的になる方が多いが、今や情報発信の方法にはさまざまな方法がある。楽ができる方法を考えるべきである。イノベーションは楽をしたい気持ちから生まれるというのが、著者の持論である。

たとえば、Googleが展開するGoogleアラートを使えば、自分がほしいキーワードに関し、ウェブ上で新たに行われた書き込みの記録をすべて読むことができる。著者が「著作権法改正」というキーワードをGoogleアラートに登録しておけば、著作権法の改正に関する書き込みのあった頁のURLが一定期間ごとにメールで送られてくる。
多くの方はGoogleアラートを情報収集のためにだけ活用し、自らがインプットすることだけで満足しているが、SBMについて積極的に考えるなら、情報発信にまで活用したい。

はじめのうちは、Googleアラートで集められる情報を取捨選択し、FacebookやTwitterで「こんな記事を見つけました」という形でリンクを貼り付け、紹介するところから始めてもよいだろう。

現に著者が頼りにしているFacebook上での友人のウォールは大半が、新しい話題のURLリンクで構成されているのだが、とてつもなく情報が早い。新聞社や雑誌社のHPにいくよりも、はるかに魅力的な情報を知ることができる。SBMの成功事例の1つになるだろう。

(4) 「マックスウェルの悪魔」を目指す

情報は一から創造しなくても、選択するだけでも付加価値をつけることができる。上記の友人のウォールを著者が愛読している理由は、彼が必要な記事の選別を行なってくれているという付加価値を認めているからである。

熱力学の世界に「マックスウェルの悪魔」という用語がある。温かい分子と冷たい分子を仕分けてくれるという架空の動物である。もし、マックスウェルの悪魔がいれば、温かい分子だけを集めてある部屋を温め、冷たい分子だけを集めて冷蔵庫のような部屋をつくることが可能になる…という想像上の産物である(もっとも、最近、それに近いことができるようになったというニュースもある)。

SBM初心者は、まず、特定の領域のニュースにおける情報選別の役割を果たして行ったらどうだろうか。ラーメンについての情報、お粥についての情報、税理士試験についての情報…「ここが一番いろいろとURLが貼られている」と話題になれは、一行の文章を書かずとも、立派な情報発信につながるのである。自らが掲げるセルフ・ブランド・ドメインにおける「マックスウェルの悪魔」(情報選別の専門家)を目指すという方針である。

(5) 雪だるま式記述法の活用

前述したインキュベーターや練習台、テスト・マーケティングの場を活用するという方法も考えられる。

いきなり、動画で情報を発信したり、長文のブログを書いたり、というのは、いくらなんでも相当な負担である。作業をはじめるまでの知的動摩擦係数が大きい状態である。

そこで、Facebookで気の置けない友達向けに軽く情報発信してみて、彼らの反応を見て、反応が良ければ、それを下書きにして、ブログを書いてみる、あるいは、友達に限定しないで公開情報としてFacebook上に投稿してみる…といった方法からスタートしてみてはいかがだろうか。これを、「雪だるま式記述法」と名付けよう。まるで、小さな雪の塊をごろごろ転がすうちに、大きな雪だるまに成長させていく過程そっくりである。心理的な負担はかなり小さくなる。知的動摩擦係数もぐっと小さくなる。

著者の場合、さらに反応が良ければ、講義動画を収録し、YouTubeにアップするようにしている。アイディアを思いついた瞬間にいきなり動画講義を収録する…ということは、やはり稀である。雪だるま式記述法の応用である。

最近では、パートナー企業の研修ディレクターの方々が、「竹永 バランス・スコアカード経営」といったマルチ・ワード検索で、著者のブログや動画の情報を検索し、「あ、これについても竹永さん、情報発信しているんだ。つまりは守備範囲ということだな。じゃあ、連絡とってみるか」というステップで、著者にアポイントメントをとってくださるようになった。

それをネタにして投稿したのが、このツイートである。

ある概念について調べたい時、その概念と「竹永」とで検索してみて、対応する動画講義があれば、『ここも竹永さんの守備範囲なんだ』ってわかりますよね。それを視聴すれば、研修をお願いしようかなって思いますよ。これって、竹永さんの術中にはまっていますよね笑」「はい。はまっていますね笑」。(140字)

講義やビジネス雑談サロン、商談や打ち合わせ、カウンセリングの途中、酒席での同席者とのやりとりなどがきっかけでおもしろいアイディアが生まれることもよくある。アイディアはすぐに忘れてしまうので、Evernoteなり、iCloudなりを活用し、これらのアイディアを書き留めたり、音声として記録したりしておけば、案外、ネタには困らないものである。

 

 

5. プロモーション・シナリオの構築

(1) シナリオ効果

SBMを推し進める際には、どんなプロモーション手段をどのように組み合わせるかというプロモーション・ミックスに目が行きがちである。しかし、組み合わせよりも重要なのは、配列である。どのようなSBMのストーリーを描き、成果に結びつけるかという「プロモーション・シナリオ」のほうが重要である。

化学の世界では、組成式だけではどんな物質か特定できないが、構造式を見れば、初めて「ああ、こんな物質か」と特定できる。それと同じことが、SBMにおいても言えるということである。

SBMに取り組み始めた際に、著者が最初に描いたプロモーション・シナリオは、「Twitterでファンを作り、Facebookに誘い、サロンに招き、リアルな商談につなげる」というものであった。しかし、現実は設計通りにはいかない。幾度も幾度も設計を変更し、1年をかけてようやくシナリオづくりは一段落した。

現在の著者のSBM上のプロモーション・ミックスの要素は次のような3つが中心である。①YouTubeによる講義動画「日本一短い経営学」、②Facebookによる友人たちとのやりとり、③パートナー企業の方々をお招きして開催している「ビジネス雑談サロン」である。最近では、①②③を要素としたプロモーション・シナリオに従って行動しているため、Twitterの位置づけは相対的に低下している。

現在の著者のSBM上のプロモーション・シナリオは次のとおり2本立てである。

① Facebookを通じて知り合った見込客やパートナー企業候補の方々をビジネス雑談サロンにお招きし、著者自身を知っていただく。
② YouTubeにおける講義動画を見ていただいた方から直接オーダーをいただく

SBMのシナリオを書く際には、出演する各役者の動きを「俯瞰」しなければならない。新規顧客の動き・ニーズ、既存顧客の動き・ニーズ、パートナー候補者の動き・ニーズ、既存のパートナーの動き・ニーズ。彼らが何を求め、どんな振る舞いをし、どんな結果が出るのか。すなわち、シミュレーションが大切である。

(2) シナリオの書換えニーズ

SBMにおけるプロモーション・シナリオは不変ではない。環境変化に応じて柔軟に書換えなければならない。著者の場合、初期に描いていたシナリオはうまくいかず、新たなシナリオを何度も書きなおし、前述にような2つのシナリオに今のところ落ち着いている。

うまくいっている場合であっても、もっとよい方法がないかを探求する姿勢を忘れてはならない。現状に満足するとあっという間に追い抜かれる。怖いのは、イノベーション・ジレンマに陥ることである。

 

 

6. 人脈構築戦略の選択

(1) 実名型SNSの活用

SBMにおいては人的ネットワーク構築のスピードがモノを言う。著者の知る限り、目下のところ、実名型SNSを活用するのが最速の手段である。ただし、その場合、すべての営業・販促活動を停止して、実名型SNSにかける「覚悟」が必要である。特に、自作自演が基本であるセルフ・ブランディングの場合、この覚悟は相当大きな条件になる(パーソナル・ブランディングと異なり、所属組織による売り出しを期待できないからである)。

ただし、もし、本腰を入れて臨めば、通常の営業をしている同業者の10年分くらいの営業業務を半年でなすことができる。

その秘訣は、「名刺」の枚数を追うのではなく、深さを追求する点にある。

実名型SNSの世界では多くの方と瞬時に知り合うことができる。行儀の悪い話だが、枕元でパソコン立ち上げて1時間も頑張ると、立食パーティ3回分くらいの「名刺」が集まる。しかし、名刺の枚数(友達の数)と成果との間には何の因果関係も存在しない。1割の名刺から9割の仕事が生まれるのである(パレートの法則)。Facebookを始めて間もないころの著者はこの論理に気づかなかった。数を追いかける愚を犯していたのである。

(2) 限定的人脈構築戦略の採用

Facebookを開始し、友達の数を増やせば、接点が増え、仕事も増えるはずだ…という当初の著者の目論見はもろくも崩れ去った。著者の場合、「開放的人脈構築戦略」を採用しても意味がなかったのである。提供しているサービス(企業研修サービスや事業戦略策定コンサルティング)が極めてニッチな商材の部類に入るという点も要因の1つだったかもしれない。

今や、5%の名刺が95%の仕事を生み出している。現在の著者が「限定的人脈構築戦略」を採用する所以はここにある。人脈構築戦略上の基本方針は、「狭く、深く、そして、より深く」である。

(3) 口コミ母細胞との関係性強化

少数であっても、たくさんの人と良好な関係を結んでいる友達がいれば、彼らを事実上のエージェント(代理人)として、SBMを展開することができる。


「口コミ母細胞」
のような友人の存在は千金に値する。ただし、彼らに対する何らかの報酬は必要である。これはもちろん経済的報酬である必要はない。「口コミ母細胞」となってくれるような友人の多くは、精神的報酬・心理的報酬のほうを喜んでくれる。逆に言えば、そこで経済的報酬を要求されたのでは、SBMを展開する意味がない。SBMの基本は「手間はかかるがローコスト」である。この場合の最も典型的な報酬とは、有益な情報の提供であろう。

中学でのテニス部時代、毎日練習の終わりにはコートにローラーをかけるという重労働が待っていた。テニス・コートにはローラーは必要である。しかし、SBMの世界では、ローラー型のプロモーションはなじまない。関係者全員に一律に情報を出すのではなく、口コミ母細胞となってくれるような友人へのピンポイント的対応を中心に考えるべきである。

風の吹いていないところで線香をたいても煙は拡散していかない。しかし、風の吹いているところで線香を炊けば、煙は拡散していく。風とは口コミの速度、煙とは自らが発信する情報である。

SBMに長けている人の多くは、どこで風が吹いているかを知っているか、あるいは、それを調べる方法を知っており、その場所でのみ、線香をたく。風邪の吹かない場所では、線香はたかない。ましてや、風の吹かないテニス・コートで重いローラー(このローラーを「コンダラ」というらしい。間違った用語だが笑)を転がすような真似は絶対にしないのである。

2013年3月6日