2016年2月のアーカイブ

重力波初観測! 何がそんなにすごいのか!?!

この数日、風邪でダウンしていました。
世紀の大発見! 重力波初観測!! 
こいつを耳にしているのに、熱にうなされ、テレビでのニュースも一切見ることができませんでした。
お祭り騒ぎに置いてきぼりを食った感じですごく損をした感じです_| ̄|○

1.重力波とは何か
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重力波の初観測は、ヒッグス粒子の発見や、ニュートリノに質量があることの発見に続く特A級のビッグニュースです。

アインシュタインが予測した物理現象の中で、唯一実際に観測されていなかったのが、重力波なのです。

重力波…確かにあまりこれまで耳にしたことのない言葉だと思います。単純な重力とは全然違う現象なのです。

重力波とは、時間や空間が”わずかに”伸び縮みする「時空のひずみ」がさざ波のように伝わる現象のことなのです。
巨大な質量の物体が、光速に近い速度で運動すると発生するとされています(発生した重力波自体は光速で伝わります)。

この「わずかに」というところがミソ。
とんでもなく「わずかに」なのです。

ちょっと出典を忘れちゃったので、聞き流していただいていいのですが、遠い宇宙の彼方で何らかの原因で重力波が発生したとして、それによって生じる時空の伸び縮みというのは、太陽系半径全体で見た場合、わずかに陽子1個分だけ伸びるとか縮むとか、そういうレベルでの「わずかな」縮みだというのです。

こりゃ、検出は無理だと思っちゃいますよね。

もちろん、重力波の発生源の物体の質量の大きさにもよるのでしょうが、なにせ、ほんっっとうに、わずかな縮み具合…

正直、私が生きているうちには、観測されないだろうなあ…と思っていました。
これが、数日前、突然、「初観測された」というニュースが全世界に報じられたわけですから、本当に驚きました。

2.電磁波による観測
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通常、私たちは何かを見る(観測する)時には、「電磁波」を使います。
電磁波というと大げさな表現に感じるかもしれませんが、要するに、光(可視光線)や電波のことです。
少なくとも、重力波よりは電磁波のほうがはるかに身近ですよね。

先日、歯医者に行ってきたんですが、久しぶりにレントゲンを撮られました。
この場合、X線という電磁波で、私の歯が観測されたことになります。

物理学や天文学の世界でも、可視光線のみならず、さまざまな電磁波が観測に総動員されていますよね。
X線望遠鏡や赤外線望遠鏡、電場望遠鏡…
いずれも、可視光線以外の電磁波を使って、天体を観測するシステムです。
人間はこれまで、努力を重ね、可視光線で見えない部分は、他の電磁波を使うことで、巧みに観測できる対象領域を増やしてきました。

ところが。
残念ながら、この努力には限界があることがわかってきました。

電磁波というのは、電磁力を伝える素粒子である「光子」を観測することで成立します。
可視光線であれ、X線であれ、赤外線であれ、電波であれ、全部、「光子」が運んでくる情報をキャッチすることで、観測は成り立っているわけです。
可視光線だ、X線だ、赤外線だ…という区分は、単に波長が異なるだけの話。電磁波であることに変わりはありません。人間が勝手に、「ここから向こうはX線」「ここからこっちは赤外線」と分類しているだけですからね。

電磁波を使っている以上、観測したい対象物から光子が飛んでこなければ、見ること(観測すること)はできないわけです。

実はこの問題。
初期宇宙の観測において無視できない問題になるのです。

3.初期宇宙の特殊な状態
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皆さんも、「ビッグバン理論」という言葉を耳にされたことがあると思います。
宇宙は、はじめ、超高密度・超高温の点のような状態だったのが、138億年前に、大爆発を起こし、徐々に膨張し、冷えていき、現在のような大きさ・温度となった…という感じで知られている理論です。
爆弾のように、何らかの物体が爆発したという理論ではなく、空間自体が急激に広がり始めたということのようですね。膨張が始まった138億年前が宇宙の始まりとされています。

最近では、「インフレーション理論」というビッグバン理論の修正モデルのほうが優勢なようです。日本でも盛んに研究されている理論だそうです。

まあ、ようわかりませんね。爆発ではなく、空間自体が爆発的膨張を遂げた… 詳しくはWikipediaあたりで調べてみてください(^^)

いずれにしても、物理学者たちは、長年に渡り、初期宇宙がどんな状態だったかを研究を重ねながら、解明しようと努力してきたことは間違いありませんね。
当然、観測と研究のためには、あらゆる電磁波(可視光線、電波、赤外線、X線…)が動員されてきまいた。

しかし。
ここに限界があったわけです。

ビッグバンなのかインフレーションなのかは置いておいて、とにかく、急激な膨張を始めて以来38万年経過するまでの初期宇宙(誕生後38万年経過するまでの宇宙)は、

「電磁波では観測できない」

のです。

なぜでしょう?
高性能の望遠鏡がないからでしょうか??
いやいや。
そうではありません。
原理的に不可能なのです。

誕生後38万年経過するまでの宇宙は、高温で密度が高く、電子が自由に飛び回っている状態にあります。
私達の知っている電子というのは、原子核の周りをくるくる回っている電子(この表現も本当は正確性を書くのですが、ま、置いておきましょう)ですよね。
原子の一部を構成しており、宇宙空間を勝手気ままに動き回っているわけではありませんよね。

しかし、誕生後38万年までの間は、宇宙全体の密度が高く、高温だったため、電子は、勝手気ままに動きまわっており、原子の一部としての役割を果たしてはいなかったのです。
要するに、まだ、「身を固めていない」状態だったわけですな 笑

電子が、宇宙全体にいよいよしていると、困るのは光子。
実は、光子は電子があると相互作用してしまい、前に進むことはできないという性質を持っています。
宇宙全体が勝手気ままな電子で充満している間は、光子はそれが邪魔で、通り抜けることができないのです。
宇宙全体が霧(電子の霧)がかかったような状態だったわけです。

誕生後38万年が経過して、ようやく、空間の膨張が進み、宇宙全体の密度が下がっていくと、宇宙全体に変化が生じます。
これまで、勝手気ままに動いていた電子たちが、落ち着いていきます 笑
各々の電子は、原子核の周りをまわるようになり、これにより、原子が誕生していきます。
光子にとっては、邪魔な電子立ちが「身を固めて」くれたため、万々歳です。
電子の霧が晴れたような状態が訪れたのです。これを「宇宙の晴れ上がり」といいます。
こうして、宇宙が始まってから38万年の後に、「宇宙の晴れ上がり」が起こるにいたり、はじめて、光は宇宙空間を自由に行来できるようになったのです。

4.初期宇宙観測の原理的限界
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ところで。
人間が宇宙を観測する際、遠くを見れば見るほど、その対象物の「昔の姿」を見ることになるのはご存知ですよね。

月は地球から光の速さで1.3秒位のところに位置しています。ですから、私がベランダの望遠鏡で月を見るときには、1.3秒前の姿を見ていることになります。
同じ理由で、太陽なら8分20秒前の姿、木星なら40分前の姿…アンドロメダ銀河なら230万年前の姿を観測することになります。

これを推し進めて、もっともっと遠くを見てみましょう。

1千万光年先の銀河を見るということは、その銀河の1千万年前の姿を見ていることを意味します。
1億光年先の銀河を見るということは、その銀河の1億年前の姿を見ていることを意味します。
100億光年先の銀河を見るということは、その銀河の100億年前の姿を見ていることを意味します。

宇宙が誕生してから138億年が経過していますから、100億年前の宇宙の姿というのは、かなり、大昔の宇宙を見ていることになりますよね。

先ほど、宇宙が晴れ上がったのがそれから38万年後だったと申し上げました。
そうすると、「138億−38万」光年先までの宇宙を、望遠鏡で見たとすれば、「138億−38万」年前の姿(引き算すると位取りが面倒なので、「138億−38万」年前の姿としておきます)を見ることができるわけです。
晴れ上がった直後の初々しい宇宙、誕生から38万年後の若い宇宙の姿を見ることができるわけです。

ところが、この考えをもう少しだけ進めて、さらにその先…たとえば、「138億−37万」光年先の宇宙を見ようとしても、見ることができないのです。
なぜでしょうか?

「138億−37万」年前は、「宇宙の晴れ上がり」の1万年前にあたりますよね。
まだまだ「五里霧中」状態笑
この当時の宇宙は、宇宙全体は勝手気ままに動いている電子の霧に覆われている状態ですよね。
電子の霧に遮られ、望遠鏡に向かって飛んでくる光子はないわけですから、電磁波による観測をすることはできないわけです。
文字通り「お先真っ暗」な状態ですから、電磁波を使った望遠鏡は役には立たないわけです。
普通の望遠鏡のみならず、電波望遠鏡もX線望遠鏡も赤外線望遠鏡も役には立ちません。

これが電磁波による観測の限界問題なわけです。
望遠鏡の性能の問題ではなく、原理的にどうすることもできないということなのです。

5.重力波望遠鏡の可能性
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「あああ。じゃあ、宇宙誕生から38万年までの間がどんな状態だったのかは、観測することは不可能なのか」

安心してください!!
観測できる可能性はありますよ。

ここで、注目すべきが、重力なのです。

電子の霧に包まれた初期宇宙。
確かに電磁波は貫通することができません。
しかし、重力波ならばこの霧を貫通できます。

実は、電磁波で観測できない初期宇宙の姿を、重力波を頼りに調べることができるのではないか…と期待されているのです。

目が見えない時に、耳を頼りにするように、初期宇宙の観測の際には、重力波という「別の情報源」を使ってみようという発想です。

誕生間もない初期宇宙が急激に膨張した際には、当然、巨大な重力波が生じています。

もう一度、確認しておきましょう。
先ごろ、世界で初めて観測されたと報じられた「重力波」とは、時間や空間がわずかに伸び縮みする「時空のひずみ」がさざ波のように伝わる現象のことです。巨大な質量が光速に近い速度で運動すると発生します。しかも、発生した重力波自体は光速で伝わります。

つまり、138億年前の誕生間もない宇宙が発生させた巨大な重力波…これを「原始重力波」といいますが…これを観測できれば、電磁波(光)の力を借りずに、その姿を明らかにすることができる可能性があるということなのです。

重力波は高速で伝わりますから、138億光年の彼方からやってくる重力波は138億年前…すなわち宇宙誕生の瞬間に生じた原始重力波のものだということになります。

はじめに申し上げましたように、重力波は非常に微弱な波なので、観測することは困難です。アインシュタインが存在を予想していたにも拘らず、百年間もその存在は観測されていなかったのはそのためです。

そういう意味で、今回、重力波が初めて観測されたということは(もちろん、今回観測されたのは、138億年前に発生した原始重力波ではないにせよ)、非常に意義のあることなのです。

今後、研究が進み、重力波の検出技術が進歩すれば、電磁波型の望遠鏡とは異なる新しい望遠鏡…すなわち、重力波望遠鏡が発明される可能性が出てきました。

電磁波望遠鏡が役に立たない「宇宙の晴れ上がり」以前の姿を捉えることも夢ではなくなったわけです。

いやはや。
おもしろくなってきました!!!

2016年2月16日